電子回路わからん日記

にゃーんと言いながら電子回路いじってます

PT8211S DAC基板ができました

ご無沙汰してます。

やっと全部品が実装できました。

PT8211S自体は2022年に秋月電子通商で購入済でしたが、安定化電源が足りなかったり基板設計に時間がかかったり興味が薄れたりでなかなか進んでいませんでした。

audio-diy.hatenablog.com

テスト期間に部屋の掃除がしたくなるように(?)、GWに電子工作したくなったのでさっさと作ってしまいました。


DACボードの構成

特段変わったことはしていません。DAC出力後のフィルタ回路もPT8211データシート記載の定数で作っています。

データシートを見て疑問に思ったんですが、ポストフィルタ回路がサレン・キー型なのは何か理由があるんですかね・・・?

PT8211ポストフィルタの推奨定数

オペアンプは出力オフセット調整ができるということでSA5534A(5532の1回路・高精度・外部位相補償版です)を使用しました。

www.ti.com

PT8211のデータシートでは、PT8211の電源にRCローパスフィルタを使用していますが「電源ラインに抵抗」というのが個人的には気持ち悪さを感じるのでLT1761を直近で使用する構成にしました。

www.analog.com

ポストフィルタ回路のコンデンサは全てフィルムコンデンサを使用しましたが、データシート上の33pFはDigikeyだと取り扱いが少なく、WIMA一択になります。

www.mouser.jp

音質とか追求するようなICでもないと思うのでC0G特性のMLCCを使用したほうが無難でしょう。


測定環境構築

技術者の端くれたるもの、DAC(というか回路)を作ったからには測定したくなるものです。

実は2年近く前に強力なオーディオ測定機器を購入していました。

このCosmos ADCですが、

innocent-key.com

数万円で手に入る非常に高性能なADCとなっています。また測定に使用するソフトウェアですが、

www.roomeqwizard.com

フリーソフトで測定可能とのことで、ここまで来てしまうとオーディオメーカーは迂闊なものを作れないですね・・・

測定環境構築にはblue-7 (  )氏の以下の記事を参考に構築しました。

qiita.com


いざ、測定!

ということで測定しようと思ったのですが、なんかやたらとTHD+Nが悪い(0.7%ほど)です。

色々見ていくと・・・

状況をまとめると、

  1. 測定用PCと再生用PCは同じものを使用
  2. 電源(PCまたはモバイルバッテリー)にかかわらず、FPGA基板に給電した途端にノイズが現れる
  3. モバイルバッテリーは安定化電源を通じ必ずPT8211S用のレギュレータに対し給電している
  4. PCからFPGAに給電している場合、FPGA基板とDAC基板間のGNDワイヤーを抜くとノイズが消える
  5. モバイルバッテリーからFPGAに給電している場合、FPGA基板とDAC基板間のGNDワイヤーの有無に関わらずノイズが発生する。

これらからFPGA基板上のスイッチングレギュレータのスイッチングノイズがGNDループにより測定機器側に流れ込んでいると予想しました。

ノイズが出ているときのFFT波形は以下のような感じです。


環境を見直して・・・

とりあえずはFPGAへの給電をPCから行い、FPGADAC間のGND接続をなくせばループは絶たれるのでその方法で計測しました。

THD+Nが0.062%と、PT8211Sのデータシートと比較して良すぎる値が出ています。

384kHz fsで1kHz正弦波再生時の波形

PT8211SのTHD+N公称値

まぁデータシート上にどんな回路で測定されたか記載もありませんので、データシートの値がかなりマージンを持たせてあるか、AUDIYの測定ミスのどちらかだと思います。


ところで

その他、現状わかっていることとしては相互変調歪(?)がしっかり出ています。

以下、48kHz fsで1kHz正弦波を再生したときのFFT

48kHz fsで1kHz正弦波再生時のFFT

44.1kHz fsで1kHz正弦波を再生したときでスペクトルに大きな違いが見られます。

44.1kHz fsで1kHz正弦波を再生したときのFFT

同じ1kHz正弦波だと、44.1kHz系統(44.1/88.2/176.4/352.8kHz)と48kHz(48/96/192/384kHz)の間に同様の傾向が見られました。

ひょっとしてと思い、44.1kHz fsで918.75Hz(1000[Hz] * (44.1/48) = 918.75)正弦波を再生したところ、

44.1kHz fsで918.75Hz正弦波を再生したときのFFT

ビンゴです。

352.8kHz fsでも同様の結果が得られたので、再生する音源に含まれる周波数と送信するデータの周波数の差分が悪さしているのは間違いなさそうです。


ということで、出来上がったPT8211S 自作USB-DACFFT波形を取ってみました。

AUDIY自身まだまだこの測定環境の使い方がわかっていない点も多い(0dBFSの合わせ方とか)ので、理解しながら他の特性(S/N日など)も見ていきたいと思います。

最近ずっとFPGAでしたがやっと電子工作っぽいことができるようになってきました(なおインフレで部品代がツラいです・・・)。