前回は正電圧側のドロップ電圧が大きすぎることがわかりました.
この原因を定電圧源にテスターを当てて観察する前に,LTspiceで原因が推測できないか見てみました.
全く同じではないですが,最低限必要な部品で構成したシミュレーション回路で見てみます.
まず気になってたのは,正電圧側に発生した2V周辺での急激な出力上昇.
これはLTSpiceでも観測されました.
0.4~0.5Vあたりに急激な出力電圧の上昇が見えます.
まずはダイオード単体の電圧を見ます.
出力と同様の曲線を描いています.(青色がダイオード,緑色が出力)
次に,ツェナーダイオードに電流を供給するトランジスタ(2SA1312)のベース・コレクタ間電圧(シアン色の曲線)と,ベース電流を決定する10kの抵抗の電圧(赤色の曲線)を見ます.
急激にベース・コレクタ間電圧が下がると同時に出力電圧が上昇している様子がわかります.
また,出力が5Vに安定してからはこのベースとコレクタの間の電圧降下が上昇するのもわかりますね.
次に,同じくツェナーダイオードに電流を供給する2SA1312のベース・エミッタ間電圧.(マゼンタ)
なるほど.トランジスタの動作が始まる(ベース・エミッタ間電圧がおよそ0.6V)ポイントでこれが起きているようです.
最後に,同じトランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧(マゼンタ)とベース・エミッタ間電圧(緑)を見るとなんとなく理由がわかってきます.
ツェナーが出力を開始するまでトランジスタのコレクタ・エミッタ間電位差が上昇しています.
おそらくはこういうことかと思います.
- ツェナーダイオードに電流を供給するトランジスタが遮断領域にいる間,電源電圧をトランジスタのコレクタ・エミッタ間に印加される
- 能動領域に移行してからツェナーダイオードの出力電圧が上昇する間は電圧がツェナーダイオードに印加される
- ツェナーダイオードの出力が安定したら再び余剰分の電圧がコレクタ・エミッタ間に印加される
では負電圧側はなぜこの盛り上がりが発生しないのでしょう?
負電圧出力も見てみる
同様に2SC3324側のコレクタ・エミッタ間電位差の推移も見てみました.
なるほど.2SA1312側は電位差が増えていくのに対し2SC3324は能動領域に近づくにつれ電位差が減少していくようです.
なので正電圧側の急激な出力電圧の変動は負電圧側では起きないということでしょう.
今回はコンプリメンタリでも遮断領域→能動領域での遷移でベース・エミッタ間電圧とコレクタ・エミッタ間電圧の関係が異なるという事例をシミュレーションベースではありますが掴むことができました.
正電源側も不電源側も同じトランジスタで定電流源を作ることができれば解決しそうですが,電源電圧を遷移させて動かす回路でもないのでその必要はなさそうです.
ちなみに,正電源側のドロップ電圧が大きい理由はシミュレーションではつかめませんでした.いよいよテスターで当たり直す必要がありそうです.
今回も最後までお読みいただきありがとうございます!